第3回 ガンダム00にも息づくMSV文化 岡崎 昭行
MS動画図鑑とガンダム00

「MS動画図鑑を再開させましょう。今回は、ガンダム00までやりましょう」
2009年の春、某所に召集された私は今西プロデューサーからこう告げられた。
MS動画図鑑とは、機動戦士ガンダムシリーズのモビルスーツ一体一体にスポットライトを当てそれぞれ約1分半ずつ解説する内容の動くモビルスーツ図鑑である。
「機動戦士ガンダム MS IGLOO」シリーズは、プロデューサーが同じなのでわからないところは本人に直接聞けば良いとして、「機動戦士ガンダム00」はある意味、まだ現行作品でモビルスーツバリエーション(以下、MSV)的な展開を複数同時に行なっているのをどこまで扱うのか、私は不安になっていた。
MSVとは、82年の機動戦士ガンダムIIIめぐりあい宇宙と85年の機動戦士Zガンダムの空白の二年間に用意された模型コンテンツであると同時に機動戦士ガンダムの世界観を広げたシリーズでもある。
また、私をガンダム好きにさせたキッカケでもあるのだ。
とは言え、MSVは枝葉の部分でもあるので、1分半の情報量の優先順位で言えばどうしても後回しになってしまう。

 基本的にMS動画図鑑はサンライズのフィルムありきからスタートするものの、ユーザーの持っている情報と齟齬を少なくするため、各種ムックや月刊誌等に載った記事、プラモデルの解説書の情報等を洗い出し、現在まで外に出ている設定線画と設定セル画がどのくらいあるかを調べるところから始まる。
ショートカットを考えれば、サンライズからの仕事なのでガンダム00の製作現場に「丸ごと資料をくれ」と言って貰うのは簡単だが、私はツインGNドライブのGN粒子で真のイノベイターに覚醒していないので、その情報量の多さに溺れてしまうのが、わかっているので、それは最初から出来ないのだ。
次に既に買っている「機動戦士ガンダム00」のDVDを全話ひたすら見続ける。
この時私は、本放送当時を毎週見ていたにも関わらず、普通のお客さんモードでダラダラと流し見ていた自分を恨んだ。とは言え、頭を切り替えて今回は、それとは別のスタンスで、メカ中心で見ることにした。
するとどうだろう。  
MSの作画や殺陣などがすごく良いのだ。
また武器もアニメ誌や模型誌でほとんど扱われないレベルのまでさりげなく使っているのである。
特に印象に残ったのは、一話限りの武器だったがアヘッドやジンクスⅢの使った熱源遮断の青いマントや電撃ワイヤーで何故か資料に扱われることがなかったのが残念だった。

そして、各模型誌やガンダムエース等で展開しているMSVも登場しているのだ。
私は、機動戦士Zガンダム放映当時、このMSVの機体が登場したのを喜んだ側の人間なので、今回もまた喜んでいたのである。

特に嬉しかったのは、PS2のゲームの特典にもなった「ガンダムエクシア 
ロールアウトカラー」、00Vから「リアルドホバータンク」、00Pからは「指揮官用ファントン」等が出ていることである。
また、全ての量産機にバリエーション機が登場しており、カラーバリエーションも豊富なため見慣れない機体が出るたびに画面を停めてはそのメカを確認してたのだ。
これらの結果は「ガンダム MS動画図鑑 [正暦/西暦]編」に集約してあるので、そちらを見てもらうとして本題。

めぐりあい宇宙的な見方の劇場版00のMS群。

2010年の夏、『劇場版機動戦士ガンダム00』に登場するモビルスーツ群のデザインが発表された。
ガンダムエクシアや00ガンダムの流れを汲むダブルオークアンタ。
ガンダムデュナメスやケルディムガンダム等の後継機ガンダムサバーニャ。
ガンダムキュリオスやアーチャーアリオスの良いとこ取りのガンダムハルート。
ガンダムナドレやセラフィムガンダム、ガルムガンダムの流れを受け継ぐガンダムラファエル。
そして、レグナントのような巨大モビルアーマー、ガデラーザ。
ジンクスやアヘッドの次世代機ジンクスⅣ。
ユニオンやAEUの量産機の集大成、ブレイヴ。
しかし、ガンダム00のスタッフならば、これら新型だけでなく従来からの機体もさりげなく登場させてくれるだろう。
「機動戦士ガンダム」シリーズの一つの文化として、時系列作品では最初のフィルムやその作品での新要素だけでなく、クロスオーバーしている小説や模型発祥の情報もフィードバックして、新たなフィルムが作られている。
「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙」を例にすれば、新要素としてコア・ブースターや量産されたビグロ、小説からは108や109のナンバリング、模型発祥として旧ザクの専用マシンガン等を大きく喧伝することなく、ひっそりとフィルムに入れていたりし、気づく人は気づくが知らない人はその話を聞いて探したりする遊びがあった。
こうした遊びも「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙」以降のガンダム映画のスタッフと観客のキャッチボールとしての一つの楽しみだから。

岡崎 昭行

フリーライター。(株)サンライズの宇宙世紀ガンダム関係での設定考証や外部ブレイン役を務める。
ガンダムMS動画図鑑[正暦/西暦]編もリサーチ時に携わる。
月刊ガンダムエース(角川書店)の『データガンダム~俊傑群像~や『GAME'S MSV』等の署名記事もある。

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